恵美ちゃんに会った
仲間のお餞別を一緒に買いに行こうと誘われて、付いて行った
買うシーンは無い
恵美ちゃんの家に行き待たされた (その家は一緒に働いていた頃遊びに行ったことが有る)
なかなか来ないので覗くと誰かと話している
待つ事しばし ――
彼の女のお母さん(お会いした事が有る)に、アナタそんな所で何をしているの?と尋ねられ
「恵美ちゃんを待っています」
「恵美子はもう出かけて、ここには居ませんよ」
「・・・・・・・・」
あっけにとられ、慌てて後を追うが見当たらない
その後も長々続いた 「夢」 だったが、起きて家事をしているうちに忘れた
この夢は妙にリアルな夢だった
恵美ちゃんは私が社会に出て一番最初に知り合った人であり
仕事のイロハも、社会人としてのイロハも、その他沢山の事を彼女から教わった
大変可愛がっていただいたものの、あまりにも密な付き合いだったばかりに、争いもあった
そのうちに彼女も結婚した。お相手は私の上役でもあった方だった
彼女は町田、私は調布に住み、数度の行き来も会ったが
そのうち、徐々に距離が空き、疎遠になった
私が挫折し、人生の壁にぶつかり悶々としていた、ある年の正月、元旦
わざわざ御夫婦で尋ねて来てくれたのである
御主人は、私の落ち込んだ姿を顔を見るのがつらい、と言う事で、外で待っている。と言う事だった
重箱に、におせちを詰め、お餅と一緒に、短い手紙が添えてあった
几帳面な美しい文字で
「○ーちゃんおめでとう。
黒豆を食べてマメに、数の子の数ほどの幸せを掴むのよ
早く元気になって、また笑顔を見せてね。えみこ 」
連絡の途絶えた彼女がおせち料理と一緒に届けてくれた、この時の手紙は、
未だに一字一句漏らさず覚えている
彼女御夫婦には、お子さんがなかなかできず、随分悩んでおり、怪しげな宗教にまで手を出し
あれほど賢明で、冷静な彼女が!?と、私を驚かせた
が、しかし、その後すぐ子供を授かった
そしてまた疎遠の時期が続いた数年後
突然彼女から電話が来た
「もしかしたら、私、死ぬかもしれない、もう一度、○ーちゃんの声が聞きたかった」
脳腫瘍が見つかり、その場所が手術しても取り除けない場所であるが
今、手術しないとどんどん機能がマヒしてしまうので、取りあえずの手術を受けるが、
場所が場所だけに・・・・。と言うものだった
それが手術の前日だったと思う
手術が終わり集中治療室から出た事を家族に確認し、見舞いに行ったが
4人部屋、部屋番号は間違えてないはずなのに、寝ている人の顔を覗き込んでも彼女は見当たらない
もう一度ネームプレートを確認・・・・
良く良く覗いて見ると、その人は、かすかに目を開け、「ムニャムニャ・・・~ちゃん」
恵美ちゃんだった!
歯は全部、抜け落ち、片目は完全に瞼が落ち、もう一方の目は、半眼、頭には包帯・・・
顔はむくんで、と言うより、腫れあがり、私の知っている恵美ちゃんの面影も無く、
いっぺんに老人のような容姿になってしまった
あまりのショックに、平静を装うのが難儀だった
いとまをし、病室を出てから電車に乗るまでの道を泣きながら歩いた。。。ショックだった
それから二度の手術を乗り越え、車いすになるのを必死のリハビリで乗り越え
ゆっくりだが歩けるようになり、入れ歯も入り、頭にはカツラを付けていた
半身は付随である
お見舞がてらに、遊びに行った時、
その不自由な体、何とか動く片手だけで、食事を作り、振舞ってくれた
私が手出しをすると、リハビリの一環だから、と決して手伝わせようとはしなかった
彼女と会ったのはそれが最後であった。
てっきり元の生活を取り戻したと思ったが
後々聞けば、夫婦仲はあまりうまくいっていなかったらしい
御主人にも肝臓ガンが見つかり、持病の糖尿も酷くなったが、
本人は治す気も無く開き直っており、喧嘩が絶えなかったらしい
そして次に彼女と出会ったのは白木の棺の中だった。
電話で連絡を貰った時、てっきり手術で?と思ったが
不自由な体で、マンションの階段を降りようとして転げ落ちたのだった
急いで尋ねたら彼女の家はとても賑やかだった
近所の人や友達が来て炊事をしていた
其の時出されたのが近所の人の作った「五目ずし」・・・・
え?!と思ったが、彼はそれを美味しそうにパクパクと喰らい「○~ちゃんも食べて、美味しいよ~♪」
妻を事故で突然亡くした夫とは思えないようなあっけんからんとした、ふるまいだった
「自分の妻が亡くなったと言うのに、よくそんなにパクパク食べられるわね
よくそんなに豪快に笑えるわね」
悪たれをついてしまった
「だって死んじゃったもん、仕方無いだろ?
彼女もきっと皆に(って誰だ?!)迷惑かけたくなくってサッサと逝ったんだよ、きっと」
「・・・・・・・・」
ここにはもう用は無い、と思い、彼女と最後のお別れをし、そそくさと引き上げてきた
電車に乗っても涙が止まらなかった
通夜、葬儀には事情が有り出席はしなかった
そして納骨も済んだ頃、電話でお墓参りがしたいからと、電話をしたが
「遠いぞ~、」八王子の方と聞きいたが、途中邪魔が入り電話を切り、そのままになってしまった。
それっきり。。。。
そして夢に彼女が出てきた
数えてみたら丁度、17回忌であり、それも、彼岸の中日だった
古い年賀状を探し、電話をしたら
「使われていません」。。。。
彼はどうしたのだろう?もうかなりの年になっているはず
肝臓がんや糖尿が悪化して死んじゃったのだろうか?
それとも、あのマンションを売り払って老人施設にでもいるのだろうか
一人娘さんはもう子供がいてもいい年だけど・・・・
亡くなって直ぐ、お悔やみに行った時、娘さんに
「何か、困った事があったら私の事、思い出してね
お母様にはお世話になったのに、何のお返しもしないうちに、逝ってしまった
其の分貴方が困った時に力になりたいの。何かあったら私を思い出してね。必ずね。」
といって別れたが。。。。
娘さんはどうしているのだろうか?
どんよりした空を眺めながら思い出を手繰っている。
17回忌のお彼岸に、彼女が、「私の事、忘れてるでしょ~ |‿◔。)・・・」
そう言って夢に出て来たのかも知れない。
ごめんね、恵美ちゃん、忘れてた!
お墓参りに行かなくても思い出したら手を合わせるからね
時々は、思い出すから。